「リンクを押さない」が正解。ITが苦手な人ほど騙されない、古川流・指差し確認術

学び

【登場人物】

古川(ふるかわ):元SE。システムを「爆弾」と捉えるリアリスト。「己の役割に嘘をつかず、どんな面倒な作業も真摯に紐解く」という古風な流儀を胸に、日々技術と向き合う男。

ユイ:事務所の事務・広報担当。チョコミントを愛する現代っ子。効率重視のあまり、時々大きな落とし穴にハマる。

【ビット&ピース:私たちの物語の舞台】

「株式会社ビット&ピース」。 ここは、最新のキラキラしたIT企業とは少し違う。時代に置いていかれた、小さな会社です。

20年前、私たちはVB6(Visual Basic 6.0)という言語を武器に、活気に満ち溢れていました。しかし、世の中がWEBアプリ全盛の時代へと変わるにつれ、かつての仲間たちは次々と会社を去っていきました。

今、この事務所に残っているのは、形式上、社長の古川さんと、私(ユイ)の二人だけ。町工場の生産管理システムなど、VB6でなければ動かせない古い現場を保守し、地元住民のPCトラブルを解決することで、私たちは何とかこの場所を繋いでいます。

――「デジタルにへトヘトな方の、駆け込み寺でありたい」

最新技術を追いかけることだけがITじゃない。私たちが大切にしているのは、技術そのものよりも、それを使う「人」の生活です。

ここでは今日も、ティーバッグの緑茶をすすりながら、古川が古いコードと向き合っています。緑茶の香りと、VB6を叩くキーボードの音が静かに混ざり合う、そんな「ビット&ピース」の物語を、今日から少しだけ覗いてみてください。

事務所の片隅で、古川が古いシステムの追加機能をプログラミングしている。対照的に、ユイのデスクには鮮やかな青緑色のチョコミントアイスのカップが置かれている

物語:メールに潜む「罠」

<strong>ユイ</strong>
ユイ

古川さん! また保守費用の未回収です。これで3ヶ月連続ですよ……経営が、コード以上に真っ赤です!

<strong>古川</strong>
古川

……申し訳ありません。ですが、彼らの生活を支えるシステムを止めるわけにはいきませんから

古川がプログラムコードの追加をしていると、ユイちゃんのデスクから警告音が鳴った。

<strong>ユイ</strong>
ユイ

あ、国税庁からメールです! 『未払い税金の督促』って……これ、すぐに手続きしないと!

ユイが勢いよくリンクに指を伸ばしかけたその時、古川の手が素早くそれを制止した。

<strong>古川</strong>
古川

……ユイさん。そのリンクは踏まないでください

古川は静かに、かつて自分が経験した失敗談を語り始めた。自分が見えていないものに、焦って手を触れることの危うさ。それが誰かの預かり物であればなおさら、一つずつ理由を確かめるのが最低限の礼儀だということを。


具体的なノウハウ:その「焦り」が隙を生む

詐欺メールが巧妙なのは「差し押さえ」「期限」という言葉で、読者の冷静さを奪う点にあります。ITの現場では、以下の3つのステップで真偽を確認するのが鉄則です。

古川流・指差し確認の極意

<strong>古川</strong>
古川

いいですか、デジタルだのITだのと言っても、結局は人と人とのやり取りです。昔、町内で見知らぬ訪問者が来たとき、いきなりドアを開けましたか?……開けませんよね。メールも同じです。以下の3つは、私たちが人生で培ってきた「人の見極め」そのものです。

  • 「立派な看板」と「身分証」が合っているか(送信元メールアドレスの確認)
    「国税庁」という立派な看板を掲げていても、封筒の裏に書かれた差出人の名前が知らない個人名だったり、妙に汚い字で書いてあったりしたらどう思う? 「この人、本当に本人か?」と疑うよな。メールアドレスも同じだ。公式のものと綴りが一文字でも違えば、それはニセ物の証拠。まずは「表札」をしっかり確認しろ。
  • 「急かす奴」は、昔からろくなもんじゃない(文面の違和感)
    詐欺メールは「差し押さえ」「今日中」と、とにかく呼吸を乱そうとしてくる。これは「田舎の婆ちゃんを騙すオレオレ詐欺」の手口と全く一緒だ。本当に誠実な役所や銀行は、メール一通で人を急かしたり、脅したりはしない。「おや?」と思ったら、一度深呼吸して、湯呑みでも置いて一服しろ。その「間」を持つだけで、偽物のメッキは剥がれる。
  • 「路地裏で渡された地図」は、信じるな(直リンク禁止)
    メールの中にあるリンクは、「道端の知らないおじさんに渡された、手書きの地図」と同じだ。あんなものを信じて歩けば、必ず沼地(詐欺サイト)にハマる。面倒でも、昔ながらの「慣れ親しんだ道」――つまり、自分のブックマークや、電話帳(公式サイト)から改めて訪問するのが、一番の近道で、一番安全な道なんだ。

よくある質問(FAQ)

Q1:うっかりリンクをクリックしてしまったら?
A:すぐにブラウザを閉じてください。情報を入力してしまった場合は速やかにパスワードを変更し、IPAの「安心相談窓口」へ連絡しましょう。

Q2:宛名が自分の名前でない場合は?
A:国税庁が個人の宛名なしで督促を送ることはありません。無視して削除してください。

公式情報の裏付け:確かな地図を持つ

最新の脅威情報は公的機関の情報を確認するのが最短です。また、税務署からの重要なお知らせは、今でも「紙の書類」が基本であることを忘れないでください。メールでいきなり差し押さえを告げるような行政手続きは、日本の文化と馴染まないのです。

<strong>古川</strong>
古川

いいですか。デジタル技術というものは、あくまでただの『道具』に過ぎません。結局のところ、最後に自分を助けてくれるのは、これまで生きてきた中で培われた『人間力(アナログ力)』――つまり、違和感を嗅ぎ分ける鼻と、急かされても立ち止まる勇気なのです。

コンピュータの画面の中であっても、現実の玄関先であっても、道理は変わりません。機械ができることには限界がありますが、皆さんが培ってきたその『肌感覚』は、どんな最新のセキュリティソフトよりも正確です。

ですから、これからも堂々としていてください。デジタルに詳しくなくても、人間として『おかしいものはおかしい』と言える強ささえあれば、決して騙されることはありません。

<strong>ユイ</strong>
ユイ

!!

(ユイは、残ったチョコミントを一口食べて、少し照れくさそうにスマホを置いた)

コメント